分譲ホテルや不動産投資を始めると、家賃などの収入が発生します。その際、「年末調整だけでいいのか」「確定申告も必要なのか」といった税金の悩みが出てきます。特に会社員の方は、給与以外に収入があると手続きが複雑になりがちです。
本記事では、不動産収入と年末調整、確定申告の違いや手続きの流れ、節税のポイントまで一つひとつ分かりやすく解説します。初めて不動産収入を得た方や、これから分譲ホテルを検討している方も、安心して読み進めてください。
不動産収入と年末調整の基本を知ろう

不動産収入がある場合、年末調整や確定申告との関係が気になる方も多いでしょう。ここではまず、不動産収入と年末調整の基本について整理します。
不動産収入がある場合の年末調整の仕組み
年末調整は、会社などの給与所得者を対象に、1年分の所得税を自動的に調整してくれる制度です。給与所得のみの場合、会社が年末調整を行うことで1年間の税負担が適正になります。
一方で、不動産収入が発生した場合、その収入分は年末調整の対象にはなりません。たとえば分譲ホテルの一室を所有し、ホテル運営会社から家賃収入を得ている場合、給与と家賃収入は別々に扱われます。そのため、不動産収入部分は確定申告をする必要が生じます。
年末調整だけでは済まない不動産収入のケース
会社員が分譲ホテルなどから家賃収入を得ている場合、年末調整だけでは納税手続きが完了しないケースが多くなります。これは、不動産収入が「給与所得」とは異なる「不動産所得」として扱われるためです。
また、不動産収入が一定額を超える場合には、必ず確定申告が必要となります。たとえば副業として分譲ホテルから毎月賃料を受け取っている場合、その年間合計が20万円を超えると確定申告の義務が発生します。この点を見落とさないよう注意しましょう。
会社員が不動産収入を得たとき年末調整はどうなる
会社員が分譲ホテルなどで不動産収入を得ても、会社での年末調整自体は通常どおり行われます。しかし、不動産収入は年末調整の対象外のため、会社はその収入分まで考慮して源泉徴収や調整を行いません。
そのため、自分で確定申告を行い、給与と不動産収入を合わせて税額を再計算する必要があります。会社に不動産収入が知られることはありませんが、適切な申告をしなければ後から追徴課税となる可能性があるため、注意して手続きを進めましょう。
年末調整と確定申告の違いを理解しよう
年末調整は、会社が従業員の給与にかかる税金を年末に自動調整する仕組みです。一方、確定申告は個人が自分で1年分の所得をまとめ、必要な税金を計算して納める手続きです。
たとえば下記のような違いがあります。
手続き名称 | 対象となる収入 | 手続きの主体 |
---|---|---|
年末調整 | 給与所得 | 会社 |
確定申告 | 全ての所得(不動産・副業含む) | 本人 |
年末調整だけで済むのは、給与所得のみの場合だけです。不動産収入があれば、確定申告との違いをしっかり把握しておくことが大切です。
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不動産収入がある人が確定申告をする条件

分譲ホテルなどから家賃収入を得ている場合、どんなケースで確定申告が必要になるのか気になる方も多いでしょう。ここでは申告義務が発生する条件やその理由について解説します。
年間20万円を超える不動産所得がある場合
会社員など給与を受け取っている方が、不動産運用などで得た所得(利益)が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。この20万円は「所得」なので、家賃収入から必要経費を差し引いた金額になります。
たとえば分譲ホテルの一室を所有し、家賃収入が年間40万円、経費が25万円かかった場合、所得は15万円となるため確定申告の義務はありませんが、20万円を超えれば必ず申告が必要です。経費の内容や計算方法も重要になるため、事前にしっかり確認しましょう。
年末調整だけで済ませてはいけない理由
年末調整は給与所得にしか対応していません。不動産収入がある場合、年末調整だけで済ませてしまうと、税務署に申告漏れとみなされるリスクがあります。たとえば副業収入や家賃収入が申告されていない場合、後から追徴課税やペナルティが科されることもあります。
また、税務署は銀行振込や不動産取引の情報を把握しているため、申告漏れは発覚しやすい傾向があります。適正な納税のためには、確定申告で全ての収入を正確に申告することが重要です。
不動産所得が赤字でも確定申告するメリット
不動産収入が経費を差し引いた結果、赤字になる場合でも、確定申告をする価値はあります。なぜなら、赤字分を給与所得など他の所得と合算(損益通算)できるため、トータルの所得税や住民税が軽減される場合があるからです。
たとえば初年度に分譲ホテルのローン利息や修繕費が多く発生し赤字となった場合、その赤字は他の所得から差し引くことができます。これにより、納税額が安くなったり、還付金を受け取れたりする可能性があります。
副業や兼業で不動産収入が発生した場合の注意点
近年では、副業として分譲ホテルや不動産の運用を始める人も増えています。この場合も、所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要です。副業収入は本業の給与とは別に管理されるため、しっかり帳簿をつけることが重要です。
また、副業での不動産収入が会社に知られることを懸念する方もいますが、確定申告時に住民税の納付方法を「普通徴収」に指定すれば会社に通知されにくくなります。ただし、申告手続きを怠ると後から税務署から指摘を受けるので注意しましょう。
不動産収入の計算と経費のポイント

分譲ホテルの家賃収入を正しく申告するには、所得の計算や経費の内容をしっかり把握する必要があります。ここでは実際の計算方法や、経費として扱えるポイントを整理します。
不動産所得の算出方法と計算例
不動産所得は、「収入金額」から「必要経費」を差し引いて算出します。たとえば年間の家賃収入が50万円、経費が30万円の場合、不動産所得は20万円となります。
計算式は下記のとおりです。
不動産所得 = 家賃収入 − 必要経費
必要経費には、管理費、修繕費、ローン利息、減価償却費などが含まれます。経費の内容を正確に把握し、証拠書類も保管しておきましょう。
家賃収入に含まれるものと含まれないもの
家賃収入に含まれるもの、含まれないものは下記のようになります。
収入の種類 | 含まれるか | 備考 |
---|---|---|
家賃 | 含まれる | 毎月の基本家賃等 |
共益費・管理費 | 含まれる | 入居者から受け取る場合 |
敷金・保証金 | 含まれない | 返還義務があるため |
たとえば、入居者から受け取る共益費や管理費も家賃収入に含めて申告します。一方、敷金や保証金は退去時に返還するため、収入には含めません。
経費として認められる主な費用
経費として扱える主な費用は以下のとおりです。
- 管理費や修繕費
- 保険料(火災保険・地震保険など)
- 固定資産税や都市計画税
- 借入金の利息部分
- 減価償却費
- 仲介手数料、広告宣伝費
これらの費用は領収書や明細をきちんと保管し、申告時に根拠を示せるようにしておきましょう。
経費計上で注意すべき点とよくある誤り
経費として認められるのは、実際に不動産収入を得るために支出した費用のみです。プライベートな支出や、証拠のない支払いは認められません。
よくある誤りとしては、「家賃収入が発生していない月のローン返済全額を経費にする」「自分や家族が利用した部分まで経費に含める」などがあります。経費の対象や範囲を間違えると、税務調査で指摘されることもありますので注意しましょう。
不動産収入と節税のコツ

不動産収入が発生したら、税金を無駄なく抑えるための工夫も重要です。この章では、青色申告や減価償却費の活用など、節税の基本的なコツを紹介します。
青色申告のメリットと活用方法
青色申告とは、一定の帳簿づけを正しく行うことで、最大65万円の控除が受けられる制度です。これにより、不動産所得から控除額を差し引けるため、所得税や住民税の負担を軽減できます。
青色申告を始めるには、事前に税務署へ届け出が必要です。また、複式簿記で帳簿をつけるなど一定の条件がありますが、記帳が苦手な方でも会計ソフトを活用すれば比較的簡単に対応できます。長期的に不動産収入を得る予定がある方にはおすすめの制度です。
減価償却費を上手に計上するテクニック
分譲ホテルなどの建物部分は、時価ではなく法律で定められた耐用年数に従って「減価償却」し、毎年少しずつ経費に計上できます。これをうまく利用することで、所得を抑えて節税につなげることが可能です。
たとえば、建物部分の購入費用が1,000万円、耐用年数が20年の場合、毎年50万円ずつ減価償却費として経費計上できます。土地部分は減価償却できないため、購入時に建物と土地の金額を分けて記録しておくことも重要です。
損益通算で節税できるケース
不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得など他の所得と合算(損益通算)することで、全体の所得税・住民税を抑えることができます。たとえばローン利息や修繕費が多く発生し赤字になった場合、その分だけ給与所得から差し引かれるため、税負担が軽くなります。
ただし、不動産所得の赤字がすべて損益通算できるわけではなく、たとえば自宅部分や自己利用部分の赤字は対象外です。事前にどの費用が通算できるか確認しておきましょう。
申告漏れを防ぐための実践的な対策
申告漏れを防ぐには、収入や経費の記録を日々しっかり行うことが大切です。領収書や通帳の記録を整理し、明細を残しておきましょう。
また、確定申告の時期が近づいたら、早めに準備を始めることも有効です。会計ソフトの利用や、税務署の相談窓口を活用することで、ミスや漏れを防ぎやすくなります。必要に応じて税理士への相談も検討しましょう。
不動産収入がある人の確定申告手順
分譲ホテルなどで家賃収入を得た場合の確定申告は、初めての方には複雑に感じるかもしれません。ここでは、申告方法や書類の準備、提出までの流れを解説します。
申告方法の選択と必要書類の準備
確定申告は「書面提出」「電子申告(e-Tax)」のいずれかの方法を選べます。どちらを選んでも申告内容は同じですが、電子申告は受付期間が長く、還付も早く受け取れるメリットがあります。
必要な書類は以下の通りです。
- 確定申告書(AまたはB)
- 不動産収入・経費の明細
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
- 領収書や契約書などの証拠書類
事前に書類を揃えておくことで、申告手続きをスムーズに進めることができます。
確定申告書類の作成と提出の流れ
確定申告書は、国税庁のホームページや会計ソフトを使って作成できます。家賃収入や経費、控除額を正確に記入し、必要書類を添付します。
完成後は、税務署に直接持参するか、郵送または電子申告で提出します。電子申告の場合は、マイナンバーカードやICカードリーダーが必要ですが、自宅から簡単に手続きできる点が便利です。
電子申告を利用する際のポイント
電子申告(e-Tax)は、インターネットを利用して確定申告を行う方法です。事前にマイナンバーカードの取得やパソコン環境の準備が必要ですが、郵送よりも還付が早かったり、提出期限が長いなどの利点があります。
操作に不安がある場合は、国税庁のヘルプデスクや、税務署のe-Taxコーナーを利用するとサポートが受けられます。慣れてしまえば書類管理や記録も簡単になり、毎年の申告がスムーズになります。
税理士や専門家への相談を検討するタイミング
初めて不動産収入の申告をする方や、経費の内容に不安がある場合、税理士など専門家への相談も選択肢の一つです。特に、所得が高額になったり、複数物件を所有しているケースでは、正確な計算や節税対策をプロに任せるメリットがあります。
また、将来的な税務調査への備えとしても、専門家のサポートは安心材料となります。気になる点があれば、確定申告の準備段階で早めに相談しておくとよいでしょう。
まとめ:不動産収入と年末調整を正しく理解して賢く節税しよう
分譲ホテルや不動産投資による収入がある場合、年末調整だけでなく確定申告が必要となるケースが多くなります。所得の計算や経費の整理、節税の工夫など、正しい知識を持って手続きに臨むことが大切です。
不動産収入の申告は初めての方には難しく感じるかもしれませんが、流れやポイントを押さえればスムーズに対応できます。疑問や不安があれば、専門家の力も借りながら、安心して不動産運用を進めましょう。
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