収益物件を売却する際、どれぐらい税金がかかるのか不安に感じる方は多いのではないでしょうか。不動産の売却は、利益や損失だけでなく、税金の支払いにも大きく影響します。特に、初めて物件を売る場合や、収益物件を複数所有している方にとっては、税金の種類や計算方法が分かりづらいと感じる場面もあるでしょう。
この記事では、収益物件の売却に関する税金の基礎から、具体的な計算例、節税対策、確定申告時の注意点まで、分かりやすく解説します。事前の知識と準備で、納税や手続きの不安を減らしましょう。
収益物件の売却でかかる税金の基本知識

収益物件を売却すると、利益の有無にかかわらずさまざまな税金が関わってきます。まずは、その全体像を押さえておくことが大切です。
収益物件の売却時に発生する主な税金の種類
収益物件の売却時には、主に次のような税金が発生します。
- 譲渡所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
- 登録免許税
- 印紙税
それぞれの税金には課税されるタイミングや方法が異なります。譲渡所得税や住民税は売却による利益が出た場合に課税される一方、印紙税は売買契約時、登録免許税は所有権移転の登記時に発生します。このように、売却プロセスの中で段階ごとに異なる税金が発生するため、事前に流れをつかんでおくことが大切です。
譲渡所得税の仕組みと計算方法
譲渡所得税は、収益物件を売却して利益(譲渡益)が出た場合に課される税金です。譲渡所得は、売却価格から取得費用や売却にかかった費用を差し引いて計算します。
具体的には、以下のような計算式で求められます。
【譲渡所得の計算式】
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費用+譲渡費用)
この譲渡所得に対して、一定の税率がかかります。税率は物件の所有期間によって異なり、短期(5年以下)と長期(5年超)で変わります。計算や書類の準備をしっかり行うことで、正確な納税が可能です。
住民税や復興特別所得税のポイント
譲渡所得が発生した場合、所得税だけでなく住民税や復興特別所得税も課税対象となります。
住民税は、居住地の自治体に納める税金で、譲渡所得の金額によって額が決まります。また、復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源として導入されたもので、所得税の2.1%が加算されます。税率そのものや、課税されるタイミングなどは、国税庁のホームページなどで最新情報を確認することが大切です。
登録免許税や印紙税などその他の税金
所有権移転登記を行う際には登録免許税が発生します。これは登記をするための手数料のようなものです。
また、売買契約書の作成には印紙税が必要となります。金額は売却価格によって異なり、契約書1通ごとに貼付します。これらの税金は、たとえ利益が出ていなくても発生するため、売却時の費用としてあらかじめ見込んでおきましょう。
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収益物件を売却した際の具体的な税金シミュレーション

実際に収益物件を売却した場合、どのように税金が計算されるのか、ケースごとにシミュレーションしてみましょう。
売却益が出たケースの税金計算例
たとえば、2,000万円で購入した物件を3,000万円で売却し、売却にかかった諸費用が100万円だった場合のシミュレーションです。
- 売却価格:3,000万円
- 取得費用:2,000万円
- 譲渡費用:100万円
- 譲渡所得:3,000万円-(2,000万円+100万円)=900万円
この900万円に対して、所有期間に応じた税率が適用されます。長期の場合は約20%(所得税15%、住民税5%程度)、短期所有なら約39%程度と負担が大きくなります。具体的な税額が計算できると、納税資金の準備や、売却後の資金計画も立てやすくなります。
売却損が出た場合の税金の扱い
売却価格が購入時よりも低く、損失が出た場合には基本的に譲渡所得税は発生しません。
また、一定の条件を満たせば、他の所得と損益通算ができるケースもあります。たとえば他の不動産売却による利益と相殺できる場合があるため、損失が出ても書類をきちんと用意しておくことが大切です。損益通算や翌年以降への繰越控除など、損失の扱いは納税に有利に働くこともあるので、詳細は専門家に確認しましょう。
短期所有と長期所有で変わる税率
収益物件の所有期間が5年以下か、5年を超えるかによって、税率が大きく変わります。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
短期(5年以下) | 30% | 9% |
長期(5年超) | 15% | 5% |
短期所有の場合は税率が高くなり、長期所有になると税率が下がります。売却タイミングによって税負担が大きく変わるため、所有年数を確認し、節税につなげることも可能です。
シミュレーションに役立つ必要書類と事前準備
正確なシミュレーションを行うためには、取得時や売却時の書類をしっかりと保管しておくことが重要です。
- 売買契約書(購入・売却時)
- 領収書(取得・譲渡費用)
- 登記簿謄本
- 固定資産税納付書
これらの書類が揃っていれば、取得費や譲渡費用を正確に計算でき、余計な税金を支払わずに済みます。売却を検討し始めたら、まずは必要書類の整理から始めると良いでしょう。
収益物件売却時に実践できる節税対策

収益物件の売却時には、いくつかの節税策を講じることで税負担を軽減できます。主な方法を確認してみましょう。
事業用不動産の買換え特例の活用方法
事業用の物件を売却する場合、特定の条件下で「買換え特例」を利用できることがあります。この特例を使うと、売却益に対する課税を一定期間繰り延べられるメリットがあります。
たとえば、売却後に別の事業用不動産を購入した場合、売却益に対する課税がすぐには発生せず、資金繰りに余裕を持たせることが可能です。ただし、適用条件や手続きが細かく決められているため、事前に詳細を確認し、計画的に進めることが必要です。
取得費や譲渡費用を正確に計算するポイント
節税のためには、取得費や譲渡費用を漏れなく正確に計上することが重要です。
- 取得費…購入代金、仲介手数料、登記費用、リフォーム費用など
- 譲渡費用…売却時の仲介手数料、測量費、契約書印紙代など
費用として計上できるものは、しっかり書類を揃えて申告しましょう。領収書などの証拠書類がないと認められない場合もあるため、日頃から大切に保管してください。これにより、課税対象となる譲渡所得を正確に算出できます。
損益通算や控除を利用した節税策
売却時に損失が発生した場合や、一定の控除が適用できる場合には、積極的にこれらの制度を利用しましょう。
たとえば、他の譲渡益と損益通算できるケースや、特例控除が使える場合もあります。損益通算は利益と損失を相殺できるため、税額が軽減される効果が期待できます。控除や特例の内容は年度ごとに変更されることもあるため、最新の情報を確認することが大切です。
専門家と連携することで得られるメリット
税金や節税対策は複雑なため、税理士などの専門家に相談することで多くのメリットがあります。
たとえば、個々のケースに合わせた節税策の提案や、必要書類の整理、正しい申告書作成のサポートを受けることができます。また、税法改正への対応や、予期せぬトラブルへの対策も専門家ならではの知識でサポートしてもらえます。安心して売却手続きを進めるためにも、早めに専門家へ相談しておくと安心です。
売却後の確定申告と注意すべきポイント

収益物件を売却した後は、確定申告を適切に行う必要があります。申告の流れや注意点を押さえておきましょう。
確定申告の流れと必要書類一覧
収益物件を売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告を行う必要があります。主な流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備
- 譲渡所得の計算
- 確定申告書の作成
- 税務署への提出
主な必要書類は次の通りです。
- 売買契約書(購入・売却時)
- 登記簿謄本
- 領収書(取得費・譲渡費用など)
- 住民票(登記名義人が変更になる場合)
書類不足で申告内容に不備が生じないよう、事前にリストアップしておきましょう。
確定申告でよくあるミスと対策
確定申告では、書類の不足や計算ミスなどが起こりがちです。
特に、取得費や譲渡費用のもれ、控除の適用忘れ、申告期限の遅れがよくあるミスです。これらを防ぐためには、事前に書類を整理し、計算は慎重に進めることが大切です。また、不安な場合は、無料の税務相談や専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
青色申告やその他の申告方法の違い
収益物件の売却に関しては、通常の確定申告(白色申告)が中心ですが、青色申告を選択している場合は帳簿付けなど追加の手続きが必要です。
申告方法 | 主な特徴 | 利用条件 |
---|---|---|
白色申告 | 手続きが簡単 | 誰でも利用可 |
青色申告 | 控除額が大きい | 事前の承認手続きが必要 |
売却益だけの申告なら白色申告でも十分ですが、日頃から事業として収益物件を管理している場合は、青色申告を活用することで節税効果が期待できます。
税務署からの問い合わせ対応やトラブル例
申告内容に不備や疑問点がある場合、税務署から問い合わせが来る場合があります。
たとえば、取得費用の証明が不十分な場合や、申告書の記載内容に矛盾がある場合などが挙げられます。こうした場合には、速やかに追加書類を提出したり、誤りを訂正したりして対応します。トラブルを未然に防ぐためにも、書類管理や記載内容の確認には細心の注意を払っておきましょう。
まとめ:収益物件売却時の税金を正しく理解し賢く対策しよう
収益物件を売却する際は、さまざまな税金や申告手続きが関わってきます。税金の種類や計算方法を理解し、必要書類の準備や節税策を講じることで、安心して売却を進めることができます。
また、所有期間や損益状況によって税額が大きく変わるため、売却前にシミュレーションを行い、余裕を持った資金計画を立てることも重要です。分からない点は専門家に相談し、トラブルのないスムーズな売却を目指しましょう。
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